伊藤建築  伊藤 喜一

私にとって大工は天職でした

高校卒業後に就職した会社を辞めた後、左官屋の友達と話している中でなんとなく大工を目指すことに。大工として働き始めた瞬間から「これが天職だ。自分が一番したかったことだ。」と、どんどん仕事にのめり込んでいきました。家系に大工が多かったので、もともとそういう血があったのかもしれませんね。(笑)

父に紹介してもらった大工さんを通して、社寺を専門とする小島建設の棟梁のもとで修業をしていました。社寺は住宅のように1年に何棟も建てられるものではないので、実践できる場が少なく一人前になるにはとても時間がかかりました。それに親方の指導はとっても厳しかったー!(笑) それでも一般の人に見てもらうために、どういう風に自分の技術を表現するか考えながらする仕事には、とてもやりがいを感じていました。

古民家再生にも生きる宮大工の経験

住宅の新築から社寺までを仕事にしていますが、宮大工の経験から最近では古民家再生やリフォームを得意としています。今は便利な金物や道具が色々出てきているので、絶対に宮大工や伝統構法を得意とする大工でなければいけないとは言いません。でも私なら、古民家や社寺ならではの良さや構造を十分に分かったうえで対応ができます。

例えば、古民家や社寺で見られる「石場建て」という石の上に直接柱を載せる構法。家の重みだけで安定していて、地震の時には動いても倒れることが少ないものです。今なら「土台なしなんて危険だ」と思われがちかもしれません。でも、私はこれが何十年何百年と日本の家を支えてきたことを知っているので、これで良いのだと肌で感じながら工事を進めています。また構造的に問題がないように柱の入れ換えや床の上げ下げ、間取りを変えることもできますよ。

伝統的な建築技術を若い世代に

近年、宮大工や伝統的な技術と知識を持つ大工の減少・高齢化していることに加え、なり手の不足が進んでいます。これからは「のぼの大工塾」などの機会に、自分が持っている技術や知識、経験したことを、大工を志す若い子たちにどんどん発信していきたいと思っています。
また宮大工を目指す子には社寺専門でなくても、伝統構法を得意とする工務店で修業して”伝統構法を扱える大工”になれば良いのだと、そういう方法もあるのだと伝えたいです。重要なのはどこで修業をするかではなく、自分がどれだけ興味を持って、意欲的に学べるかということ。私の身近に興味を持ってくれる子がいたら、社寺の改修の時には手伝いに来てもらったりして実際の現場を見て学んでもらう機会をあげられるのにな、と思います。


伊藤喜一(いとう きいち)プロフィール
伊藤建築(いとうけんちく)代表 大工歴44年
昭和34年四日市市生まれ、四日市市在住。 趣味はゴルフ
建築大工技能士1級、建築施工管理技士2級、古民家鑑定士、玉掛け、小型移動式クレーン
<伊藤建築ホームページ> https://daikukiichi.jp